当時のリハビリについて思うこと
私は6歳の時に交通事故に遭い60年以上義足装着の障害者です。医師になるまでには大変な時間を要しましたが、何とか医師になれました。
医師となり自分の体験がいかせるのではないかと思いリハビリテーション科に進みました。
当時のリハビリ医療について思うこと
リハビリ科の医師というので、医者が患者さんに対してリハビリをするのかなと思ってしまいますが、医師は直接リハビリをほとんどしません(もちろん少しされる医師も存在します)。
リハ医の大きな役割は、主に病気によって起こってきた障害(運動障害や高次脳機能障害が多いが)をもった患者さんの障害を診断し、障害の治療が可能ならそれを行い、またその障害がどの程度改善回復するのだろうかと予想をたてることが可能な医師です。
障害はいろんな疾患で起こります。疾患の治療はその疾患の専門医がみることが多いのですが、障害に関してはリハビリ科にお願いするといった状況になるのです。従ってリハ医は障害をもつ疾患を幅広く診ることが可能な医師です。各科の専門医はその科の疾患だけを診るのが一般的ですが、例えばリハ医が対象とする疾患は、脳卒中・脊髄損傷・整形外科疾患・神経筋疾患・脳性麻痺や高齢者と言ったように、その疾患で起こってくる障害を診るということになります。
つまり、既設の科(脳外科・脳神経内科・整形外科・小児科・一般内科など)の先生方がそれぞれの専門性での縦糸を作っているとすれば、リハビリ医の仕事は、各疾患で起こった障害を、障害と言う視点で横糸に診られる医師であると言えます。
実際の治療としてのリハビリを全面的に行うのは、セラピストと言われる専門職で、理学療法士や作業療法士や言語聴覚士といったスタッフです。リハ医は患者さんの障害を診断評価して、この患者さんをこのようなゴールにしていこうと治療目標を立ててその目標に向かって各専門職に指示をだすのです。
セラピストは医師の指示があって初めて自分の専門性を患者さんに発揮させることができる職種なのです。医師もセラピストも一緒の目標に向かって患者さんを治療していくのが病院の中で展開されているリハビリテーションであり、患者さんに対して常にチームでアプローチしているというイメージです。
私がリハ医になった1990年頃は、リハ医は「オーケストラの指揮者の役割」に喩えられていました。医師としての技術的なものよりは、チームをまとめ一つの目標に引っ張っていくリーダーの位置づけであったようですが、私はこの考えに個人的には違和感を感じていました。私の医師像は医師であれば、自分にはこのような技術や技量があると言える医師像を自分なりに目指していました。オーケストラの指揮者を良しとはしていなかったのです。
次回:「ゴックン先生」の原点
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