新領域の発見
前回:「治療法のない障害」に挑む日々
自分たちのリハビリの領域にこのような大事なものがあることを先生方に理解してもらえたことが私は大変うれしい事でした。この領域では、医師の関与する部分がかなり多くあり、もう「オーケストラの指揮者ではない」と思いました。また医師だけではうまくいかず、リハビリスタッフも必要で、医療者全員で取り組むチーム医療が実践できる領域をリハビリの中に私は新しく見つけることができました。そこにはリハビリの根幹はチーム医療であるという理念とまったく合致した領域がありました。
また、口から食べられるようになると、本人ばかりでなく、ご家族もたいへん喜び、笑顔が増え、体重も増えて元気になっていく姿を見ることができました。口から食べる・飲み込むということは日常生活に直結しているために、患者さんの言われることが身にしみてよくわかるなーと感じます。嚥下障害の治療、すなわち口から食べられるようにしていくことを考えるだけで、リハビリの本質を理解できると考えるようになりました。
こんな大事なことを医療従事者がほとんど知らなかった事実に、私は愕然とし、この領域をとにかく知ってもらわなければならないと、この領域の普及にのめり込んでいきました。医師や看護師、リハビリスタッフ以外にも、口から食べることに関連する職種の歯科医や歯科衛生士さんや栄養士さんなどの研修会に呼ばれ講演をするようになり、研究会や学会にも良く参加しました。また書籍を執筆することで、この領域の啓発活動に長い間積極的に取り組んできました。
口から食べることは人間の根源に関わることです。口から食べられなくなったことは想像もできない。「食べられなくなったら死んだ方がましだ」「口から食べて肺炎が起きても口から食べたい」と言った患者さんがいた事実を、医師であればなおさら知って欲しいと思っています。
そうした経過から摂食嚥下障害の治療が私のライフワークとなりました。
0コメント